サブスクリプション・エコノミー時代の到来 ―所有する時代の終わり

サブスクリプション・エコノミーとは?
Subscription=継続課金

従来の売るまでを重視する商品売り切り型と違い、継続課金してくれる顧客との長期にわたる関係を重視した新時代のビジネスモデル

なぜ、サブスクリプション・エコノミーが拡大しているのか?という背景は、世界的に広がる所有から共有へ(シェアリング・エコノミー)、所有からサービスとしての利用へ(例, SaaS: Software as a Service)という所有のわずらわしさというペインポイントへのソリューションの拡大、導入のしやすさ、使い勝手の良さ、スケールのしやすさ、コスト優位性もあるだろう。

SaaS企業で構成されるSaaS指数の上昇っぷりがはんぱない。 SaaSとは? SaaS: Software as a ...

また、ネットの普及と”デジタル人口”の拡大や、クラウドの普及によってスケールしやすくなってきたこともある。

本稿はソフトウェア企業の業績に関する有益な資料を発見したことで、その紹介と共にこれまでの記事をまとめていこうという内容だ。 I...

CDなどの物理メディアの音楽事業が滅びゆく中で、現代の音楽産業はソフトウェアベースで再構築され、ダウンロード販売も”所有の時代の終わりの到来“と共に、”所有しない音楽ストリーミングサービス“にシフトしている。

音楽ストリーミングサービスを牽引するのはSpotifyで、所有しない時代への変化とともにダウンロード販売からストリーミングに軸足を移したAppleによるApple musicも伸びている。

企業がオンプレミス(自社運用サーバにインストール)からクラウド、SaaSベースにシフトしているのと同様に、消費者の消費活動も所有からサービスとしての利用へシフトしている。

自家用車を所有せず、Uberなどにシフト。様々なサブスクリプションの事例は後述している。

サブスクリプション・モデルの強さとは

モノ主体のプロダクションエコノミーと違い、構造的にカスタマーサクセスにフォーカスできている。

人間だもの…売ったら終わりの仕組みだったら無理やり買わせたりしてしまう営業マンもいるだろう。そのギャップはカスタマーサクセスに結びつかない。

サブスクリプション・モデルは契約した後にどれだけLTV(Lifetime Value: 顧客生涯価値)をあげられるかがビジネスとして重要になるため、既存顧客維持率(Retention rate)が重要になる。

つまり、そういったカスタマーサクセスが業績の重要指標に組み込まれているために、顧客が満足してくれるように仕組み的にsame boat状態になるわけだ。

これがサブスクリプションモデルの良いところだ。

チェーンストア理論で規模拡大してきた小売企業も、店舗の棚を占拠したうえで広告で商品を喧伝してきたパッケージ商品ブランド企業も、供給主導型から需要主導型へのシフトで勝者と敗者が分かれている。

タッチポイントとは? ざっくりいえば、顧客との接点。 企業戦略において、意識しないと気づかないうちにタッチポイント争奪戦で劣...

サブスクリプションに限らず、モノ中心から顧客とのリレーション中心にシフトしているのが全体的な潮流だ。

サブスクリプション企業の損益計算書

このように、サブスクリプション・ビジネスをサポートするプラットフォームSaaS企業のZuora創業者のサブスクリプション・エコノミー提唱者Tien Tzuo CEOによる解説は毎度すばらしく分かりやすい。

Zuora【NYSE:ZUO】 Zuora(ズオラ)は企業のサブスクリプション・ビジネスを支援する包括的プラットフォームを提供する...

サブスクリプションビジネスモデル企業やSaaS企業は年間の経常収益(ARR)が最重要で、売上ベースのチャーン(解約率)やリテンションレート(顧客維持率)の傾向を把握すべきだ。

SaaS企業ではなくてもRecurring Revenue比率を上げるのが優良企業の鉄板の戦略なので、ARR(年間経常収益)にコミットしているSaaSはネイティブに強い構造をしている。

SaaS企業の業績はARRといった主要なもの以外に、売上ベースの既存顧客維持率(Retention rate)とチャーンレート(Churn Rate: 解約率)、LTV(Lifetime Value; 顧客生涯価値)、ARPS(Average Revenue Per Subscriber: サブスクライバーあたりの平均売上高)、CAC(Customer Acquisition Cost: 顧客獲得コスト)などのチェック項目がある。

参考: SaaSの総まとめ: 急成長SaaS企業リストから学ぶSaaSの強さとは

成長と利益を企業のステージによってバランスさせていくのがサブスクリプション・モデル企業のスタイル。

この成長+利益率で業績の強さをフィルタするSaaSの40%ルールもまとめているので参考まで。

これまで、セールスフォース、アドビ、サービスナウ、アトラシアン、ワークデイ、ゼンデスクなどの主要なSaaS企業を見てきたが、多くの企業が赤字...

サブスクリプションの事例

メディアも広告モデルからサブスクリプションモデルで売上の予測可能性を高め、顧客との持続的な関係を強化したい。

その中でも注目はユーザベースのNewsPicksで、NewsPicksは広告だけでなく月額課金モデルをうまく成長させている。

他に日本企業だとマネーフォワードも会計のサブスクリプションビジネスで成長している。

わずか月額10ドルで映画館通い放題(1日1回)のMovie Passも衝撃的なサブスクリプションだ。

サブスクリプション・モデル転換を成功させた企業

アドビ・システムズのサブスクリプション転換についてはもう何度も話題にしているので既存の読者の方には申し訳ないがもう一度取り上げたい。

アドビ クリエイティブクラウド ARR推移
参考: サブスク移行を成功させたAdobe Systems

これを見て分かる通り、ネイティブにサブスクリプションモデルを採用せず、途中からターンアラウンドした場合は、一時的に痛みを伴う。

その代り、アドビのように不正利用被害をうけてきたパッケージ製品企業としてはそういった利用者を正規利用者に転換できるようになるし、大型アップデートごとに売上のバラつきが生じることもなくなり、売上の見通しの予測可能性が高まる。

サブスクリプション転換中の企業

一方で、サブスクリプション転換中なのは同じくパッケージ型でインストールするタイプのCAD製品を手がけてきたオートデスクだ。

Autodesk-Free-Cash-Flow-Projection
参考: 2D/3Dの統合CADソフトウェアで高いシェアのオートデスク

こちらも一時的に痛みを伴ったが、サブスクリプション転換促進のための特別割引プロモーションなどのコストは徐々に減少し、よりARRベースで評価できるようになってきている。

また、BI(ビジネスインテリジェンス)ツール・ベンダーのタブローソフトウェアもサブスクリプション転換中だ。

Tableau-Software-Subscription-Pricing-Economics
参考: データを本当に使えるようにする視覚化サービスを提供するTableau Software

また、SaaS企業のほとんどはサブスクリプションモデルで、以下で詳しく紹介している。

SaaS企業で構成されるSaaS指数の上昇っぷりがはんぱない。 SaaSとは? SaaS: Software as a ...

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