GEが3Dプリンターメーカー大手2社(ArcamとSLM)を同時買収した件ですが、そもそもGEはすでに航空機エンジン部品生産などにメタル3Dプリンティング技術を取り入れていました。
これはGEに限ったことではなく、たとえば欧州勢のAirbusは航空宇宙技術のために3Dプリンティングセンター工場の設立に動いています。
つまり3Dプリンティング技術はこれまでのように複数の部品を接続し組み立てるよりも少ないパーツで済むためシンプルで頑強化・軽量化でき、業務効率化技術としても優れているため、航空機エンジンを中心に導入が急務となっています。
よって、GEのこの買収は合理的な選択であり世界屈指の”Additive Manufacturing“(積層造形)企業としてプレゼンスを高めることが期待されています。
金属3Dプリンター大手2社買収によるGEの2つのメリット
1つは、このジェットエンジン部品工程の効率化によりGE自体が10年間で30~50億ドルのコストダウンを想定できるとのこと(GE調べ)。
そして2つ目として、2020年までにAdditive Manufacturing事業を1億ドル規模に成長させ、他社への販路を拡張していくことができます。(同上)
買収先の3Dプリンターメーカー2社の顔ぶれですが、どちらも世界屈指の企業です。
買収1社目のArcam ABはビームで3D金属積層造形
1997年創業のスウェーデン企業Arcam AB(アーカム)は
金属の電子ビーム溶解装置で、GEは58億6000万クローナ(約6億8500万ドル)で買収。
2015年時点の従業員数はおよそ285名。
http://www.arcam.com/
高度な金属粉末材料を生成し、航空宇宙や医療産業を顧客に持つ大手サプライヤ。
アメリカの製造業、ロケット製造など航空宇宙産業・医療産業を主要顧客に急激に導入を増やし、
3DCADデータから歪みなく直接金属部品を成形し高密度で鍛造並みの強度の高品質な部品を高速に成形が可能で評価されている。
EBM(Electron Beam Melting)を特徴とする。
また、アーカム社は2013年にカナダの3Dプリンター用金属素材製造のレイマー・インダストリーの部門を3千5百万カナダドルで買収していたため、高度な金属粉末材料の生成能力も保有していることから素材から成形まで垂直統合している点がGEの能力拡張のためのポイントです。
買収2社目の老舗のSLMはレーザーによる3D金属積層造形
ドイツのSLMソリューショングループは老舗の造形装置の開発・製造メーカで、
GEは6億8300万ユーロ(約7億6200万ドル)で買収。
2015年時点で260名の社員数。
かねてからラピッドプロトタイピング(試作手法)に強く、
2006年に世界初のチタンとアルミでの造形に成功するなどこの分野のリーダーであり金属3Dプリンターとしてのシェアも高い。
金属パウダーからのレーザーを使用した3D金属積層造形システムを航空宇宙、エネルギー、歯科・医療産業、自動車産業などのクライアントに供給している。
このように複数のレーザーによって高速造形されているのが分かります。
試作造形や研究用の機体と、量産向けのモデルとラインナップを拡充している。
GEは金融部門や低付加価値部門を売却しテクノロジーに選択と集中
この2社の買収をみるように、GEは事業売却と買収によるトランスフォーム中です。
イメルトCEOが
Additive manufacturing is a key part of GE’s evolution into a digital industrial company.
と言及するようにシナジーもあり長期的ビジョンに沿った買収であると言えるでしょう。
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みんなの投資分析とコメント
なぜ航空機部品で3Dプリンターなのか?と思われる方もいるかもしれませんが
つまりは3Dプリンターはまだまだ量産には向いていないので
導入のコストに対し、損益分岐点を考えると
どうしても高い利益率のある航空機部品などから少しずつ3Dプリントに変えていく必要があるということですね。
また、GEは昨日3Dプリンターのベンチャー、カーボン3Dに出資したみたいです。
カーボン3Dの技術は液状の樹脂に特殊な光を当て力を加えることで従来の3Dプリンターの100倍速で造形することができるとする期待のものでグーグルや多くの企業が出資しています。
従来の3Dプリンター技術もいくつかが特許切れによりコモディティ化もすすんでおり
プレイヤーもひしめいているのでGEが目論むようなマーケットシェアがとれるかどうかは未知数です。
GEのライバルであるシーメンスが
生産プロセスへの3Dプリンティング(積層造形技術)の”本格的な”導入でストラタシスと提携しました。
GEとシーメンスという2大巨頭がアディティブ・マニュファクチャリングに舵をきっています。となると導入コスト削減余地は広がっていきそうですね。