テンセント【騰訊】世界最大のゲーム会社+中国最大SNSベースのWeChat Payエコシステム

テンセント

Tencent(騰訊):中国株/香港市場【銘柄コード0700】
テンセントは世界最大のゲーム会社で中国最大のメッセージング・決済プラットフォームを展開。

テンセントは中国3大ネット企業BATの一角で(*1)、この3社は新興企業に出資・買収して各方面で覇権争いをしている。

*1 BAT=Baidu(バイドゥ)・Alibaba(アリババ)・Tencent

BATは中国デジタル広告のほとんどを支配しているほどの巨人。

規模感でいうとGoogleやFacebookと比べると以下のような感じ

さすがに世界的広告プラットフォームを展開しているGoogleやFacebookと比べるとまだ小さいが、ほぼ中国国内だけでこの規模である。

テンセントとFacebookはそれぞれ世界の2大メッセージアプリを展開しているという共通点がある。

ちなみにFacebookはPCがまだ主流だった頃はFacebook内ブラウザゲームが小さくない収入源だったが、スマホゲームブームでFacebookのゲーム事業の存在感はなくなった。

一方のテンセントはオンラインPCゲームが主力だったが、きっちりとスマホゲームでのプレゼンスも高めることに成功している。

Tencent-SmartPhone-Games

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世界最大のゲーム会社としてのテンセント

テンセントの売上の約半分を占めるゲーム事業。

PCゲーム・スマホゲーム共にオンラインで対戦を行うタイプのゲームが主力の世界最大のゲーム会社で、中国ゲーム市場でのマーケットシェアは圧倒的1位で、2位のNetEase(ネットイース)とあわせてほとんどを支配する。

中国はオンラインゲーム大国で、ゲーム市場も成長中。

ちなみにテンセントは中国国内だけのゲーム会社ではなく、世界最大のPCゲームであるLoLことLeague of Legends(リーグ・オブ・レジェンド)を運営する米ライアットゲームズを2011年に買収し、2016年には世界1位のスマホゲームだったクラッシュ・オブ・クランやクラッシュ・ロワイヤルの開発元のフィンランドのSupercell(スーパーセル)の過半数株式をソフトバンクから取得したり、アクティビジョン・ブリザードの株式も少数保有、さらに2012年には有力ゲームエンジンのUnreal Engineを開発するEpic Games(エピックゲームズ)の株式も40%取得。

つまり…世界最大の売上だけでなくPC/スマホ問わず世界1位のゲームブランドを数多く擁する世界最強のゲーム会社といっても過言ではない。

なにせ中国最大のメッセージングプラットフォームであるWeChatと動画メディアなどゲームとのシナジーが見込める事業を展開しているのだから隙がない。

バトルロワイヤル・ゲームのPUBGのように買収または取り込めなかったゲーム(推察)は類似ゲームをその圧倒的なプロモーションパワーをもって投入し、少なくとも中国国内に関しては芽は早いうちに摘むことができる立場にあるもはやチートゲーマーの類。(追記: PUBGと中国でのライセンス契約を結んだようだ。)

さて、テンセントの中国最高の人気ゲームは王者荣耀(Honor of Kings/王者栄耀)という、上述のテンセントが買収したLoLに似たゲームだ。

王者栄耀はMOBA(マルチプレイヤー・オンライン・バトル・アリーナ)と呼ばれる人気ゲームジャンル。

このゲームがあまりに中毒性がありすぎて、未成年者のゲーム依存の助長を中国政府から批判され改善圧力をかけられるほどの社会現象を起こした。

テンセントとしては未成年者のログイン時間を制限する中毒防止措置を開始するなどの対応を行った。

日本のスマホゲーで主流だったガチャ課金で強くなる「Pay to Win」と違い、王者栄耀は「Pay to Fun」といって、キャラクターのコスチュームを変えるなど強化には直接つながらない課金を主軸としており、スポーツのようにやりこめばやりこむだけ強くなる×MOBAという競技性から長時間プレイヤーが続出したのかもしれない。

このPay to Funという課金形式とプレイヤー数の圧倒的多さは「eSports」と相性がよく、中国のTwitch的存在のYYなどのライブストリーミングサイトでは王者栄耀プレイヤーのゲームプレイのライブ配信が視聴者を増やしている。

eスポーツというのは例えば以下の動画のように王者栄耀で実際の会場でチーム戦を行い、賞金も設定されている競技性のあるゲームのプロゲーマー達の大会とその観衆(ライブ配信視聴者も含み、その広告が巡り巡る)という一連のGame Showのようなもの。

中国最大のメッセージングプラットフォームを起点としたメディアや決済の爆発的普及

以下、ゲーム事業以外について説明する。

Tencent-SNS

テンセントは2011年にリリースしたメッセージングアプリの微信(WeChat)*2やQQといった中国最大のソーシャルメッセージングサービス(日本でいうLINE、世界でいうワッツアップやメッセンジャー)をおよそ10億人ものユーザー数まで伸ばし、そのユーザーベースを基盤に動画・音楽・ニュースなどのメディア・そして微信支付(WeChat Pay)というQRコードを使ったスマホ決済サービスを展開し、今やWeChat Paymentは社会インフラレベルにまでなってきているほど。

*2 中国国外版アプリがWeChatで、中国国内版が微信(Weixin)なのだが、わかりやすさのため便宜上WeChatとして当記事では扱う。

Tencent-media

メディアとしてのテンセントも存在感があり、たとえば有料の月額会員数で第1位のビデオストリーミングサービスでもある。

次に、WeChat Payの話をする前に、メッセージングアプリWeChatのもう1つのすごさについておさえておきたい。

「アプリ」ということは結局のところAppleのApp Storeでインストールするか、Androidのプラットフォーム(中国ではGoogleが規制されているためオープンソースのAndroidをベースとした中国独自のApp Storeが乱立)でインストールするかしかなく、iPhoneユーザーがアプリでなんらかの課金をした場合、その手数料がAppleのようなプラットフォーマーに渡る。

そこで、テンセントのWeChatは「ミニプログラム」というWeChatアプリ内アプリのような仕組みをスタートさせ、アプリと違ってインストール不要でサクサク、ウェブサイトよりもできることがシームレスで多いというWeChat小宇宙を誕生させた。

これが非常に面白いのでぜひ各サイトのミニプログラムの威力についての説明を掘り下げていただきたい。

テンセントのWeChatPayとアリババAlipayの決済の覇権争い

WeChat Payは中国の多くの場所でスマホをQRコードにかざすと決済ができる仕組みで、QRコードさえあればいいので高価なPOSレジを必要としない簡易さから店舗などでも導入がサクサク進み、爆発的に普及した。

今や現金を持たなくともWeChat Payなどのスマホ決済だけで十分になってきている。

もともとテンセントの運営サービスで使えるように2005年に始めたオンライン決済サービスの財付通(Tenpay)はあったが、2013年の中国政府によるオフライン清算市場の規制緩和で、中国クレジットカード最大手の銀聯に支配されていた市場にアリババとテンセントが参入できるようになり、両社のその圧倒的なユーザー数から一気にシェアを拡大。

銀行と直接つながる上(現在は網聯という中国政府の精算機関が間に入り資金の流れを国家が監視できるようになった)、決済における仲介業者がいないため手数料を安く抑えることができ、この状態にたとえVISAやMastercardがクレジットカードで乗り込んでも(長らく参入を中国当局に規制されていたため中国クレカは銀聯1強だった)中国国内での普及は難しいだろう(海外からの観光客はともかく)、もちろんVISAもMastercardもこの破壊的現象に対応するため、新興国ではQR決済にも取り組み、両社でQRコードを統一規格で運用する戦術に切り替えて応戦している。

Apple Payですらこの2社の決済にかなわなかったことが競争力を示している。

そんなWeChat Payとの中国での連携にスタバ創業者も興奮。

このようにロイヤルティサービスと決済を絡めることもできるその拡張性も強さの秘訣。

また、WeChatは友人・知人同士のメッセージアプリであることから紅包(お年玉のようなもの)をWeChat Payで送りあったりもできる。

WeChat Payの競合は中国最大級のECプラットフォームで投資先も含めアジアのECを牛耳るAlibaba(アリババ)のAlipay(支付宝)

Alipayが始めた「銀行の預金金利よりも有利な金利を得ることができる金融サービス」をテンセントもWeChat内で利用可能にするなど追随。

アリババはTmallやTaobaoなどの中国最大級のECプラットフォームを運営しており、ニューリテール戦略といってビッグデータによって実店舗のシステム化もはじめてアリババ経済圏を構築しているのでWeChatがどれだけ強くなろうが、需要がなくなることはないだろう。(テンセントもECに関しては後述するアリババとEC2強のJD.comの筆頭株主で対応オプションはもっている)

アリババの決済サービスのAlipayは中国ではテンセントの決済サービスWeChatPayに猛追されるも、インドの決済サービスのPaytmに出資するなど海外展開は先行。

「中国旅行客を取り込むため」と海外でのAlipayとWeChat Pay支払い可能な店舗が増え続けている。

日本でも爆買いの記憶が新しいが、世界中で中国旅行客の経済的インパクトは強く、政治的理由で旅行を一時期ボイコットされた台湾や韓国の観光産業が苦しんだりもして旅行客を使った海外取り込み戦略に決済も組み込まれつつある。

QRコード決済は偽札のリスクもなくなるメリットがあるが、QRコードという容易さから張り替えられて振込先を変えられる事件も起きているが、これも解決可能な一過性の問題だろう。

アリババとテンセントの勢力争い

スマホ決済だけでなくアリババとテンセントは両社の出資先を含めた各方面で激突している。

たとえば配車アプリのDiDi(滴滴出行)はテンセントとアリババがそれぞれ出資していた2大配車サービスが競争激化で赤字に耐えられなくなって合併してできた中国最大の配車サービスで、その競争の激しさはUberをも中国から撤退(吸収された)に追い込んだほど。

また、シェアリング自転車市場でも世界レベルで覇権争いが激化。

テンセント陣営のMobike(摩拜単車)とアリババ陣営のofo(小黄車)の激突だが、これらシェアリング自転車利用時の決済はAlipay、WeChat Pay、(一部Apple Pay)と決済影響圏を広げる布石でもあり、Mobikeはテンセントクラウド(騰訊雲)、ofoはおそらくアリババクラウド(Aliyun/阿里雲)で運用されているだろう。

ちなみにアリババは中国国内クラウド1強であり、テンセントはクラウドで2-3番手。

また、米国でAmazon EchoとGoogle Home、AppleのHomepodが競争するスマートスピーカーだが、中国のスマートスピーカーではJBAT(JD, Baidu, Alibaba, Tencent)が揃い踏み。

テンセントは小Q机器(Qrobot)を投入。

アリババもそうだが、テンセントも多くの有望な会社に出資し大株主となっている。

中でもJD.comはテンセントのECエコシステム戦略において重要な要。WeChatからのJDへの送客がJDの成長をさらに加速。

両社で顧客ビッグデータを統合運用し、効率的な広告を広告主に提案できる。世界最大の広告代理店WPPのCEOもこの「アリババとテンセントと組むだけで包括的な広告展開が可能」な点を評価している。

また、特許出願数がテンセントはすさまじく多い。

ただ、買収できないなら同じ機能を実装して圧力をかけるのはFacebookがSnapchatに対して行う覇道の定石だが、テンセントも例外ではない。

ちなみに、そのスナップチャットに対してテンセントはスナップチャット株の10%分の投資を行い元々出資していた分を含め12%の出資比率の大株主となっている。

これは非常に興味深い動きで、Facebookは中国の規制(検閲)のためまともに進出できないバリアを張られながら、テンセントは間接的にスナップチャットと連携してFacebook包囲網を形成していく可能性も出てきた。

このあたりの駒の進め方が最高に面白い企業で、定点観測するにはAmazonなどと共にワクワクさせてくれる企業だ。

新興国株インデックスに投資しているなら、すなわちテンセントをそのうちの5%程度投資しているということ。

ちなみにテンセントの筆頭株主は南アフリカのメディア企業のNaspers(ナスパーズ)

テンセントの業績推移グラフ

*2017年度は2QまでのTTM

Tencent2017q3

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