オープンハイブリッドクラウドのサブスクリプションビジネス「Red Hat」の決算とビジネス定点観測【NYSE:RHT】

RedHat-Open-Source-Company
Red Hat, Inc(NYSE:RHT)の最新の決算およびビジネス状況を四半期ごとに定点観測し追記していく記事。

67四半期連続の増収記録を維持するRed Hatはオープンソースソフトウェア・ソリューションのエンタープライズ環境における導入を支援する企業。

Red Hatのビジネスについては以前記事にしているのであわせて参考にしてください。

Red Hat, Inc.【NYSE:RHT】 レッドハットは世界的なオープンソースソフトウェア&サービス、エンタープライズITソリュー...

Red Hatの業績データ

<以下FY2019までの補足>

売上高のうち88%がサブスクリプションビジネス。

残り12%はRed Hat Open Innovation Labsなどの研修・コンサルティングやトレーニング。

Linuxディストリビューターで知られるRed Hatの売上高の64%がコア事業のLinuxインフラストラクチャー(Red Hat Enterprise Linux)関連のサブスクリプション。

一方で、Linux上で稼働するミドルウェア製品を充実させるなど徐々にApp Dev & Emerging(Application Development-related and other emerging technology subscription)の売上高比率も高まっている。

App Dev & Emergingを牽引するのはOpenShift、OpenStack、Ansibleが中心。

RedHat-Ansible
Source: マンガでわかるRed Hat Ansible Automation

Red Hatが2015年に買収したAnsibleは企業のITインフラの全体に渡る運用をエージェントレスで管理できる自動化プラットフォームでIT部門だけでなくビジネス部門でも活用できるシンプルさが特徴。

RedHat-Hybrid-Cloud

インフラ(企業向けリナックスのRHELのサポートベースのサブスクリプション)の売上高伸びは鈍化しているものの、伸びているAnsibleへのRed Hatの期待が伝わってくる。

JBOSS Middlewareの案件は大型化しているようだ。

さて、業績ウォッチに戻るが、FY2019Q1時点で弱気な業績見通しを出した通り、あまり強い内容ではなかった。

RedHat-Bookings-2019Q2

ここまで開示しているのが素晴らしいが、トップ顧客層のRenewal Ratesがけっこう下がっている。

RedHat-Bookings-2018Q1

とりあえず昨年時点の資料も掘ってみると、Renewal Ratesの振れ幅は大きいようだが。

RedHat-2019Q2-Bookings

およそ半分が米国を中心とするアメリカ大陸から。

販売チャネルはパートナーからが77%

Red Hatのオープンハイブリッドクラウド戦略

RedHat-Open-Hybrid-Cloud

Red Hatのオープンハイブリッドクラウド戦略を支える3つの軸

  • ハイブリッドクラウド基盤(OpenStack)
  • クラウドネイティブアプリケーション・プラットフォーム(OpenShift)
  • クラウドに対応した管理と自動化(Ansible)

RedHat-Beyond-Hybrid-to-Multi-Cloud

ハイブリッドクラウドからマルチクラウド(パブリッククラウドまたはプライベートクラウドなど複数のベンダーのクラウドサービスで構成されるクラウドのアプローチ)まで。

RedHat-Open-Source-Community-to-Enterpise

オープンソースコミュニティベースのアプローチを活用して、大企業環境でオープンソースの導入・運用を支援するところでマネタイズするビジネスモデル。

もちろんRed Hatもオープンソースコミュニティに深くコミットしている。

RedHat-Total-Addressable-Market

Red HatのTAM(Total Addressable Market)の想定。

Red Hatの株価

追記: 2018/10/299
IBMがRed Hatを約340億ドルで買収すると発表。

1株あたり$190.00での買収となる。

RedHat-History

Red Hatの決算を時系列でまとめる

Red Hat ’20 Q1決算> 2019/6/20
EPS(Non-GAAP) $1.00 予想 +$0.14
売上 $934.11M (+14.8% Y/Y) 予想 +$2.53M

Red Hat ’19 Q4決算> 2019/3/25
EPS(Non-GAAP) $1.16 予想 +$0.15
売上 $879M (+13.8% Y/Y) 予想 -$6.65M

Red Hat ’19 Q3決算> 2018/12/17
EPS $0.96 予想 +$0.09
売上 $846.8M (+13.2% Y/Y) 予想 -$5.4M
前受収益 $2.5B (+20% Y/Y)

上位25件の契約のすべてが120%を超えるアップセル率で契約更新。

Red Hat ’19 Q2決算> 2018/9/19
EPS $0.85 予想 +$0.03
売上 $822.75M (+13.7% Y/Y) 予想 -$6.74M

<Q3ガイダンス>
売上 $848M~$856M (コンセンサス: $862.2M)
EPS $0.87 (同: $0.92)

<FY19ガイダンス>
売上 $3.36B~$3.4B (コンセンサス: $3.4B)
EPS $3.45~$3.49 (同: $3.47)

“larger competitive loss”の影響が大きかった。来年には成長率の再加速が見込まれるとカンファレンスコールで言及しているが株価は素直にネガティブに反応。

Amazon Linuxなどとの競争も激しくなっているんだろうか。

Red Hat ’19 Q1決算> 2018/6/21
EPS $0.72 予想 +$0.03
売上 $813.53M (+20.2% Y/Y) 予想 +$6.04M

Q2ガイダンス
売上 $822M~$830M (コンセンサス: $854.74M)
EPS $0.81 (コンセンサス: $0.89)

FY19ガイダンス
売上 $3.375B~$3.41B (コンセンサス: $3.45B)
EPS $3.44~$3.48 (コンセンサス: $3.43).

Red Hat ’18 Q4決算> 2018/3/26
EPS $0.91 予想 +$0.10
売上 $772.33M (+22.8% Y/Y) 予想 +$10.73M

利益率の高いコンテナアプリケーションプラットフォーム「OpenShift」などがさらに伸びている。15年連続増収増益だけある安定した決算。

Red Hat ’18 Q3決算> 2017/11/19
EPS $0.73 予想 +$0.03
売上 $747.98M (+21.6% Y/Y) 予想 +$13.6M

ガイダンスもコンセンサス以上だった。

Red Hat ’18 Q2決算> 2017/9/25
EPS $0.77 予想 +$0.10
売上 $723M (+20.5% Y/Y) 予想 +$23.55M