ライブコマースを制する戦い: Amazonは撤退、伸びる中国、メルカリの野望。

amazon Style Code Live

ライブコマース(Live Commerce)は分かりやすくいえば、従来のTVショッピングの双方向コミュニケーション型ネット版で、ネットを使ってアプリやサイトで生放送されるライブ動画を通じて配信者と視聴者がリアルタイムにやり取りしながら商品を購入できるサービスである。

そのライブコマースで先行するのは中国で、米国ではAmazonもライブコマースに参入するも撤退(後ほど説明)、最近日本でもメルカリの参入によって活気づいてきそうだ。

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ライブコマースのTVショッピング型と消費者同士型

従来のTVショッピングは大量の在庫をかかえて今しか買えないと煽って売りさばくスタイルで、実際に商品の販売元企業の取材を巻き込んだりと製作費用をかけられる従来のTVショッピングの手法はライブコマースでも強い。

一方、TVショッピングではなくネット動画ストリーミングだからこそ可能にした個人間ライブコマースの伸びに注目したい。

インフルエンサー(日本でいうところのYouTuberのように影響力のある個人)が商品を紹介する動画を生放送で配信するライブコマースの伸びは特に中国では社会現象となった。それに応じてC2C型(コンシューマーtoコンシューマー/消費者間)の伸びも期待できそうだ。

どちらも放送中に視聴者からのコメントに出演者(配信者)が反応したり、質問に対してリアルタイムで出演者が回答するので、コミュニティ型のショッピング体験となっているが、より商品のカバー範囲が広く(個人であれば少数在庫のニッチ商品でもコスト割れしない)個人間の距離が近く「その人から買いたい」という需要を幅広く満たしてくれるのは後者ということだろうか。

なぜ中国でライブコマースが爆発的に普及したのか

日本でも定着しつつあるYouTuberというジャンルだが、中国ではそのようなネットインフルエンサーは網紅(ワンホン)と呼ばれ、ライブストリームを通じて商品を紹介し、1年で1人で50億円もの売上を叩き出したネットセレブとして有名な張大奕(Zhang Dayi)など、2016年には特に爆発的にライブコマースが流行した。

そもそも、中国の動画配信プラットフォームでは、デジタルギフトの形で視聴者が「送金」することが珍しくなく、インフルエンサーが動画を配信することで生計をたてられる手段が構築されていた。

なぜ中国でここまでライブコマースが爆発的に流行したかは、中国のECにおいて偽物が多い現実も一因だろう。

ライブコマースだと、写真ではごまかせない本物感が伝わるし、質問にリアルタイムで受け付けてくれるため信頼性があがるのだ。

中国のライブコマースを始めたのは女性向けファッションに強い蘑菇街(モグジェ)や京東(JD)、そしてタオバオ(淘宝网/taobao)がはじめた淘宝直播と、ライブコマース専門では红豆角直播(Hon dou jiao)などはVRまで対応している。


Source: taobao.com/使い方説明ページ

特にタオバオの淘宝直播は、タオバオ自体が中国最大のC2Cプラットフォームであり、Alipayなど決済に強みのあるアリババが運営している点が有利だろうか。インフルエンサーLIVEコマースからタオバオ本体のような大規模なC2C型ライブコマースまでしっかりと拡張できるかどうか注目だ。

メルカリのライブコマース参入は大きなインパクト

機を見るに敏。フリマアプリ「メルカリ」のダウンロード数が7500万件(日本5000万、米国2500万)と圧倒的な勢いのあるメルカリがライブコマースに参入した。

メルカリは動画をライブストリーミングしながら視聴者とコミュケーションを取り、商品を売買できるライブフリマ機能「メルカリチャンネル」を2017年7月6日にリリースした。

まずは、ライブコマースに慣れていない日本人に対してどう普及させていくか模索する段階で、いきなりCtoCのみでサービスを放り込むのではなく、まずはタレントなどがメルカリチャンネルで実際にライブショッピング配信することで慣れさせるところから、最終的にフリマの王者であるメルカリらしくCtoCのまさにフリーマーケットのように消費者同士コミュニケーションのできるライブショッピング体験のプラットフォームを構築するということだろう。

C2C型ライブコマースでプラットフォームになってしまえば、消費者が映像をそれぞれ撮ってくれるのでメルカリが映像制作する必要がなくなる。

中国だけでなく日本でもC2Cは偽物や誤解を招く騙し出品や、写真写りでよくわかりにくい(あるいは実力以上に”盛れる”)ことがデメリットだったが動画コマースや、それ以上にライブコマースはこの問題を多少解決できる。

Amazonがマーケットプレイスでロングテールを捉えることができたように、在庫に限りがあるTVショッピング型では到底たどり着けない膨大な商品数をライブコマース化することができれば、日本初のユニコーン企業(未上場ながら評価額が10億ドルを超える企業)であるメルカリの地位は当面盤石かもしれない。もちろんメルカリには様々なトラブルはあったが出る杭をうってすぐにつぶしてしまうことが日本では多すぎるように思える。

ライブコマースから撤退したAmazonのスキマをどこが埋めるのか注目

あまり話題にならなかったが、Amazonはこっそりやっていたライブコマースから撤退している。


Source: (記事トップ画像も)Amazon Style Code Live

Amazonが2016年3月からスタートしていた生放送TVショッピングのスタイル・コード・ライブ(Style Code Live)は、ライブチャットとして番組の放送でリアルタイムに質問やコメントが双方向でできるファッション番組で、ほぼ毎日放送されていたが、結局2017年7月に終了が決まった。

視聴者数や売上などは開示されず、うまくいっていなかったことが示唆される。

あまり全面に押し出していない実験的取り組みだったので中途半端な結果に終わってしまったように思えるのが残念だ。

Amazonは世界最大のゲーム実況配信プラットフォームTwitchを買収しており、元々ライブ配信プラットフォームとしては相当有利なポジションに立っているので、市場投入のタイミングは後手でも対応できる余裕はある。

世界最大のTVショッピングがライバルと合併しネットへ移行している

従来型TVショッピング大手も座して市場の変化を眺めているわけではない。

世界最大のTVショッピングQVCがライバルのホームショッピングネットワーク(HSN)と合併し、Amazon、ウォルマートに続く北米3位のオンライン売上高の企業となった。

QVCテレビショッピング画面

QVCの売上高の62%はEコマースからで、これは元々店舗を持たないTVショッピングはネットへの移行にそれほど障害がないということだ。

Amazonに対する脅威(Amazonエフェクト)で巨大な業界再編が起こりつつある。

ただ、TVショッピングの延長としてのライブコマースはともかく、C2Cライブコマースはコミュニティの運営力も求められるのでTVショッピング企業が成功させるのはまた違ったセンスが求められる。

ライブコマース、ソーシャルコマース、つまりは”experience”

となると、米国ライブコマースを制する企業がどこになるのか?

Amazonは撤退=失敗ではなく、決して脅威になりかねないライブコマース市場を放置することはないだろう。

そもそもライブコマースという言葉に囚われてしまうと本質的な変化に気づけない。

Appleの直営店最高責任者であり元バーバリーCEOのアンジェラ・アーレンツは「小売は20%がショッピング、80%が体験であるべきだ」と言っている。

その”experience”をどういった切り口で提案していくか、という点では、別に全ての消費者がライブ配信で買いたいと思っているわけではない。他にもソーシャルコマース(ソーシャルメディア+Eコマース)というような攻め方もある。

たとえば、Facebook傘下のInstagramではアプリ上の写真からそのまま商品を選択して購入できる購入ボタンが導入されており、これはインスタ上のインフルエンサーが紹介した商品を直接購入できるようにする導線設計だ。

インスタグラム購入ボタン
Source: wsj

その他、FacebookはLIVEに注力しているためその延長線上にはライブコマースも見据えているだろうし、FBはBotにも取り組んでおり、AmazonはDash buttonやAIのAlexaを、GoogleもAIアシスタントGoogle Homeを各家庭にばらまき、新しい消費の形をも模索している。

プッシュ型のライブコマースと違う軸のプル型、あるいはAIあるいはBotの個人のニーズ・ウォンツを解析した提案型コマースといった展開もあるだろうし、従来型の商品をずらっと並べておくだけのEコマース以外のカテゴリにも取り組まないと気づいたら市場のいくらかを奪われているリスクもあるということだ。Amazonであっても小売企業に安泰という言葉は無さそうだ。

もはや境界線もあいまいな、物理的なフィールドに縛られない、全方位での買い物客の心の争奪戦が新しい段階に移行している。

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