オーディエンスネットワークに苦戦するもオンライン広告の大半をGoogleと共に支配するFacebook

facebook google 2017q1 ad share
Source: Poynter

GoogleとFacebookの2社だけでオンライン広告費の大半を握っている。

GoogleとFacebookの2社でデジタル広告費の伸びの85%を占めているという(PubMatic調べ)

さらに2017年Q1の最近のデータでも明らかにGoogleとFacebookがどれほど市場を支配しているのかが分かる。

2017 q1 digital ad share
Source: Digital Content Next CEO Jason Kint

2016年通期でグーグルとフェイスブック2社でデジタル広告市場の70%強、市場成長の90%を占拠しているとの分析もある。

広告主にとって検索やYouTubeなど莫大なトラフィックを誇るグーグルと、伸び盛りのInstagramを傘下におく最大のSNSであるフェイスブックを広告配信先から外すことは難しく、むしろ上場企業の多くは株主の求めに応じ、ちゃんとInstagramやYouTubeなどに広告予算を割いていますよとアピールしている。

フェイスブックとグーグルの広告売上高の伸び
Source: KPCB

このようにGoogleもFacebookも他を凌駕する広告売上の伸びを見せている。

一方で、YouTubeで不本意で過激な場所に広告が露出されてしまったとして、世界6位の広告代理店ハバスがYouTubeへの広告出稿を停止したという報道が全米にも広がり、追随してAT&Tやジョンソン&ジョンソンなども広告配信を停止した事例もあるが、それだけ広告費においてGoogleが占めているシェアが高すぎるという状況の裏返しでもある。

この2社のプラットフォームにじわじわと取り込まれている警戒感をパブリッシャー・広告会社は持っている。

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Facebookの広告枠枯渇問題

広告売上高をその巨大さにも関わらず伸ばし続けたFacebookだったが、決算カンファレンスコールではFacebookのアプリ内広告枠はこれ以上増やせないと投資家に注意喚起している。

Facebookのユーザーのニュースフィードに流れてくる広告露出にはユーザー体験を損なわない限界があり、まもなくその限界に到達してしまうからこれまでのような広告枠拡大での売上増に関しては期待しないでくれということだ。

もちろん、まだユーザー自体が増えている分の伸びはあるが、すでにFacebookの月間アクティブユーザーは20億人に到達しており、地球上の人口以上にユーザーは増やせない。

Facebookが買収したInstagramの伸びは著しく、Facebookは動画内広告などに力をいれているので、同社は座して広告枠の飽和を待っているわけではない。

そこでFacebookは、GoogleがGoogle傘下の媒体以外にも広告を配信できるようにするGoogle AdSenseのように、Facebookメディア以外に広告ネットワークを構築するオーディエンスネットワーク(Audience Network)という広告配信ネットワークの構築を2014年から始めていたが、なかなかGoogleの牙城を崩すことに苦戦している。

Facebookの切り札、オーディエンスネットワーク広告の強み

消費者の25%が1日に3台以上のデバイスを利用し、40%以上が行動を完了するまでに複数のデバイスを利用する。(Facebook調査)

すると、オールドタイプのアドテク業界が使っている端末にひもづくクッキー(Cookie)依存の広告配信だと、端末ごとに別の個人として識別されてしまうため、本来の広告配信イメージと違った必要のない広告露出につながってしまう

たとえばニールセン調査によると、動画広告でそのブランドを嫌いになった人が17%おり、その理由の65%が広告がしつこすぎることだった。分かる。

Cookie=あるサイトにアクセスした時に再訪時に便利なようにIDなどを端末が記憶しておく情報

しかし、Facebookユーザーは各デバイスでログインするため、Cookie/端末に依存することなく、人単位での広告効果測定(クロスデバイスID測定)を行える。

これはGoogleも同様で、億単位の会員数がいて、ログインしっぱなしがデフォルトになっているからこそできる強みである。

Cookieが存在しないアプリ内での広告測定は従来では難しかったが、ログイン情報活用によって一貫した追跡が可能になる。

Facebookの独自の強みは、ユーザーが自発的に入力した年齢・性別・居住地・興味関心などの直接データを基にしてピンポイントで指定したい層にターゲティング広告を配信できる点だ。

そして、Facebookがはじめたオーディエンスネットワーク広告は、Facebook以外のアプリやモバイルサイトで広告を配信できるプラットフォームで、強みを活かした人単位での広告配信ができる。

フェイスブック広告の優位性

広告の審判と選手が同じ人である、という問題点。

世界最大の広告会社WPPのCEO「FacebookやGoogleは自分たちの広告プロダクトの成果を自分たちで測定したがるが、審判と選手は同じ人になってはいけない」とコムスコアなど第三者による広告効果の測定監査を認めてこなかったことに不満をあらわしていた。

GoogleとFacebookは、自社広告の他社によるトラッキングは許容しないくせに他パブリッシャー広告はトラッキング可能にする排他的広告プラットフォームによって市場を支配している。

セールスフォース、オラクル、AdobeやWPPなどの他社は、断片化された個人データ(Cookie等)に苦戦しながらも複数端末をまたいだ個人データを管理できるよう一部は共同でデータを共有しクロスデバイス測定に努力しているが、GoogleとFacebookは10億人以上のワンストップなIDデータを広告測定に活用できる。

オンラインで購買につながる最後のクリック以外の導線でのコンバージョン貢献度(アトリビュ―ション)を知ることがマーケティングや広告効果の最大化につながる。

つまり「最後にみた広告接触だけが広告効果ではない」という当たり前の話で、消費者の購買行動・成約につながった一連の、様々な媒体での複数回・複数のデバイスでの広告接触も成果への貢献とみなすラストクリック以外の広告効果測定もできる仕組みをFacebookはもっている。

しかしその強みである複数のデバイスにまたがる広告測定のデータを他社に解放しなかったことで蓄積されていた不満が、ついにFacebook広告の誤指標問題で炎上し、問題の解決のために第三者測定要請を受け入れ、広告測定のオープン化でテストしているがどこまでその強力な人ベースの広告測定能力を第三者測定のように提供するかまだ信用されているとは言えない。

結局、Googleの壁は厚かった。

ad server share
Source: Datanyze

まず、Googleはアドサーバー(デジタル広告のインフラ部分)で独占・独走状態だ。

かつてYahoo、マイクロソフト、Google、AOLで市場を四分割していた時代があったが、今や広告サーバーシェアの4分の3をGoogleが支配している。

Facebookも競合であるGoogle(傘下ダブルクリック)のアドサーバー市場の独占に対抗しようと、2013年にマイクロソフトからAtlas(アトラス)を買収したが、2016年11月にアドサーバー事業から撤退する敗北を喫した。

また、アドテック業界もGoogleにかなわないと見ているのか資金調達の勢いが大きく減速している。

アドテク業界の資金調達難
Source: crunchbase

オーディエンスネットワークの拡大にはFacebookは苦戦しているようだ。

Google vs Facebook Audience Network graph
Google vs Facebook Audience Network
Source: Datanyze

圧倒的な大差。FacebookがGoogleに対抗するためには、Facebook/Instagram以外での広告エコシステムを構築する必要があるが、道半ばである。

そこで、逆にコンテンツをFacebookの中に閉じ込めることによってGoogle広告ネットワークに対する優位性を作ろうという動きがある。

企業コンテンツをFacebook影響圏内に誘致することで流れを変える

Instant Articles Launches for iPhone with Thousands of New Articles Published Daily

Today Facebook launches Instant Articles for iPhone – a beautiful new way to read articles in News Feed that is faster and more interactive than ever before. Starting today, everyone on iPhone can read thousands of Instant Articles from your favorite publishers every day. Look for the lightning bolt on the top right corner of some stories shared in News Feed. The lightning bolt indicates it's an Instant Article. When you tap the story, it loads ten times faster than a standard mobile web article and the reading experience is beautiful and interactive. Check out this short video to see what Instant Articles look like. We hope you love it as much as we do.

Instant Articlesさんの投稿 2015年10月19日(月)

2015年にFacebookがInstant Articles(インスタント・アーティクルズ)というパブリッシャーの記事をそれぞれの企業サイトではなく”Facebookの中にFacebookの規格で”配信しはじめたことはFacebookがインターネットの中央でブラックホールのようにコンテンツを吸引しはじめるかもしれない大きな変化だった。

Instant Articles

インスタント・アーティクルズを導入すると、Facebookのサーバーで配信するため自社サイトの最大10倍のスピードで記事が表示され、その表示速度のサクサク感のおかげで、クリック数20%アップ、離脱率70%軽減、シェア数30%アップの効果を得られるとFacebookは主張している。

メディアがインスタントアーティクルズで記事を配信するにはインスタント記事APIを使うか、FB仕様のRSSフィードで配信するか選ぶだけだ。

つまりメディアはFacebookの圧倒的集客力の前に屈し「自分のサイト」ではなくFacebook内で稼ぐためにコンテンツ丸ごと出張、つまりFacebookの部品のようなコンテンツサプライヤーとなった。

・・・かのように見えたが、あまりにもFacebookの要求が厳しく大手メディアは離反しはじめている。

たとえばNYタイムズはいち早くこのインスタント・アーティクルズに参加したが、収益化に関して自社サイトに飛ばした方が良いと参加を取りやめている。

その他のメディア大手の多くもFBサーバーに全ての記事を配信することはやめている企業が増えており、現状はFacebookによる制約があまりにも厳しすぎるフォーマットであるということだ。

そういったパブリッシャーの圧力から結局Facebookは、広告掲載枠を拡大したり、最大の要求であるサブスクリプション(有料定期購読)登録ができるように仕様を改めることを決めた。

メディアが読者を囲い込むサブスクリプションモデルを導入できなければ、Facebookアプリ内にとどめられた世界でメディアは代替可能でコンテキストのない無個性化された単なる記事という部品製造の単発的サプライヤーでしかない。

それでもワシントン・ポストなどはインスタントアーティクルズに全面的に記事を配信するほど好意的で、パフォーマンスが良いと満足しているようだ。

また、ビジネス・インサイダーはインスタントアーティクルズで配信する記事の広告販売をFacebookに任せており、こちらも満足している。

ちなみにワシントン・ポストもビジネス・インサイダーも両社ともAmazon創業者ジェフ・ベゾスの投資先であるためGoogle対抗でどちらかというと対抗馬であるFacebookの肩をもっているのかもしれない。

ビジネス・インサイダーのようにインスタントアーティクルズで配信する記事の広告をFacebookのものにしなければならないわけではなく、AdSenseや自社が選定する広告ネットワークの選択は自由だ。

では、Facebookになんのメリットがあるかというと、Facebookアプリ内で囲い込んだ記事を高速表示することでFacebookアプリを離脱せずにFacebookに戻ってきてくれて、またFacebookの広告を閲覧してもらえる頻度が増すのだ。

実際インスタントアーティクルズのPVは上がるが滞在時間は少ないという分析があり、つまりユーザーは従来の外部サイト記事に飛ぶより高速回転してFacebookとインスタントアーティクルズの記事をグルグル回遊しているのだ。

その上、インスタントアーティクルズでFacebookの規格で制御することで、ユーザーのシェアを外部のTwitterなどではなくFacebookのシェアが最優先となるので、ソーシャル拡散能力を囲い込むことにもつながるのだ。

もはやFacebookはパブリッシャーを部品化したインスタントアーティクルズによってこれまで以上に最大のマスメディアとして君臨するのだ。

フェイスブックの成長可能性は、ゴールドマン・サックスによると「コンテンツ・バイヤーと広告プラットフォームの大規模な統合」というテーマに表すことができるというものだ。

Facebookはニュース記事だけではなく、動画コンテンツのバイヤーにもなってきている。

世界最大のソーシャルネットワークとして自社サイト内にどれだけコンテンツを囲い込めるかが、外部サイトをアドネットワーク化して支配し検索可能にしたGoogleとの対抗策となっているのだ。

フェイスブック(Facebook Inc)は世界最大規模の実名SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス=人と人とのつながりを促...
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