ディア・アンド・カンパニー【NYSE:DE】世界最大の農機メーカーが機械学習×農機でAgTech化

Deere-and-Company

Deere & Company【NYSE:DE】
ディア・アンド・カンパニーは世界最大の農機メーカー。

鍛冶屋のジョン・ディア(John Deere)が1837年に創業した米国の農機メーカーで世界でも最大手。

シクリカル銘柄であり投資対象としては難易度が高いので深掘りはしないが、世界のトレンドとして面白い機械学習×農機の部分は要チェックか。

Deereが買収した機械学習×農機の注目のスタートアップ

Deere-Blue-River-Technology

Deere & Companyが2017年9月に機械学習×農機でリーダーになりつつあったBlue River Technologyを買収した。

ブルーリバーは機械学習および画像認識によって農機が作業対象の作物を認識し、計画に不適切な「敵」を識別し排除(除草剤散布など)する企業だ。

雑草など作物の育成を阻害する対象物が存在する場所にのみ除草剤をピンポイント散布することにより除草剤の使用量を90パーセント減らせるという。

Blue River Technology's See & Spray – close up & slow mo

実際に散布している映像が↑で、さらに狭いピンポイント散布も可能だ。

ドローンを使って取得した農地・作物データから画像認識で除草剤散布などの作業計画を支援する企業もあるが、ブルーリバーの技術を使えば作物に近い地上で農機が直接判断が下せるため効率がよくなる。

Artificial Intelligence: Smart Machines for Weed Control and Beyond

<↑もっと深くブルーリバーの技術を知りたい人向けの解説>

なお、ディア・アンド・カンパニーは1999年に、GPSテクノロジー企業のNavCom Technologyを買収して以来、すでにGPS(全地球測位システム)によって農地において数センチレベルの高精度で農機のコントロールを実現しており、この買収によって農機に目とちょっとした頭脳をもたせることができるようになる。

日本のクボタもアグリロボトラクタなど(今のところ有人監視下での)無人自動運転農機を開発しており、世界レベルで農業の省人化・効率化への取り組みは進んできている。

競合としてはスイスのエコロボティクス(ecorobotix)の製品は農機と一体化せずに独立で太陽光で動く無人除草ロボットで、これも注目だ。

ディア・アンド・カンパニーはどのような企業か?

機械学習×農機のAgTech(農業:Agriculture+技術:Technology)の話はこの辺にして、本体の話にうつる。

前述したが、投資対象としては難易度が高いシクリカル銘柄で、全ての記事に共通することだが改めて、記事化=投資推奨というわけではない。アメリカ部の記事は基本的に決算が出たタイミングで記事にすることが多い。


<↑ディアの農機・建機がたくさん登場するPV>

ディア・アンド・カンパニーは「農機・芝刈り機」が主力で大半の収入がこの事業なので基本的に見る事業はこちらになる。

また「建機・林業」事業は正直イマイチで利益率もパッとしなかったが後述する道路建設機械メーカーのヴィルトゲンを2017年に買収したことでやや比率が上昇した。

その他は農機のためのローンなどを提供する「金融サービス」。

知っておきたいStock to use ratio

Global-Stocks-to-Use-Ratios

Stock to use ratioとは在庫-需要比率(在庫量の消費量に対する割合)

つまり、その穀物在庫が年間需要における何%をカバー可能かどうかの指標で、豊作や凶作などの影響も含めた需給のミスマッチが反映される。

米国産とうもろこしのStock to use ratioの適正水準は15%から20%
米国産大豆のStock to use ratioの適正水準は10-15%という。

そうやってみると米国産大豆の在庫は逼迫感はなく、中国からの関税(報復関税の原案)ダメージは大きそうだ。

というのも、米国が輸出する大豆の3分の2は中国向けで、輸出された大豆は豆腐や納豆の原料となるだけではなく、絞られた大豆が食用油原料、家畜飼料用の大豆ミールなどになる。

(つまり、トウモロコシや大豆価格の高騰は豚肉や牛肉価格の上昇につながる。)

世界最大の大豆輸出国であるブラジル(7230万t)に次いで、米国(6232t)は世界第二位の大豆輸出国で、3位アルゼンチン(800万t)、4位パラグアイ(590万t)、5位カナダ(580万t)、その他(750万t)で、合計約1億6000万t。(米国農務省による資料:2018年5月10日公表)

つまり世界の大豆のほとんどはブラジルと米国で生産されている。

トウモロコシも含め、世界的にみても大量の穀物を生産する米国の農家の事業をJohn Deereブランドのトラクター(耕す農機)やコンバイン(収穫用農機)といった農機が支えている。

US-Farm-Commodity-Prices

ちなみに商品先物取引所大手のCMEのリサーチによると高いStock to use ratioは、将来の価格変動が上下するかどうかにはほとんど関係していないという。

US-Farm-Cash-Receipts

コモディティバブル後の反動も激しかったが、農家にとってのやや厳しいフェーズはいったん落ち着いたか…

建機・林業機械部門を補強するヴィルトゲンの買収

Deere-Wirtgen

ドイツの道路建設機械メーカー(非上場)のWIRTGEN(ヴィルトゲン・グループ)をディアが46億ユーロで買収すると2017年6月1日に発表(2017年12月に買収完了)。

ヴィルトゲンは自走式の道路建設・道路補修機械(路面切削機やコンクリート舗装機など)や、鉱石の採鉱、処理のための機械装置を提供する世界的メーカー。

この買収によりディア・カンパニーの建設・林業機械部門の売上高に約56%を追加。

The-John-Deere-Strategy

というわけで、農業と建機というサイクルの変動の影響が避けられない予測可能性の低い事業を展開。

Deereの競合

CNHグローバル(CNHインダストリアル NYSE:CNHI)
AGCO(NYSE:AGCO)
クボタ(東証1部:6326)
クラース(CLAAS)

競合も手強く、技術革新に対応しなければならないのでR&Dを絞ることはできない。

ディアの売上の大半が北米で、北米マーケットは死守したいところだ。

なお、芝刈り機に関してドローン勢が面白い動きを見せている。

ディア・アンド・カンパニーの業績推移グラフ

売上の予測可能性が低く、投資難易度の高い銘柄だろう。

投資はともかく、ビジネスとしては機械学習×農機で農業の生産性を向上させ、食糧問題の解決を支える企業の1社として応援している。

Deere-and-Company-Devidends

Deere-and-Company-Share-Repurchase

ディア・アンド・カンパニーの株価

シクリカル銘柄の代表的存在でもありダウ銘柄の建機メーカー大手キャタピラー(NYSE:CAT)の株価値動きとほとんど一致。

ディア・アンド・カンパニーの決算を時系列でまとめる

Deere & Company ’18 Q3決算> 2018/8/17
EPS $2.78 予想 +$0.03
売上 $9.29B (+36.0% Y/Y) 予想 +$80M

Q4ガイダンス
売上 ~$8.58B +21% Y/Y (コンセンサスは$8.82B)

Deere & Company ’18 Q2決算> 2018/5/18
EPS $3.14 予想 -$0.19
売上 $9.75B (+34.3% Y/Y) 予想 -$80M

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